玉野競輪で村上義弘が見せた神がかり的な走りに解説者は全員無言になった
玉野競輪最終日12Rでそれは起こった。
前日の準決勝で3位に入ったものの、決勝で村上義弘は原田研太郎や
早坂や神山や吉田といった若手に勝てないんじゃないか?
準決勝の原田研太郎の走りを見た人は誰もがそう思ったはずだ。
私も当然そう思った一人だ。
準決勝のレース後の村上の表情は曇っていた。
村上義弘といえば年末のG1で何度も優勝しているイメージがある。
大事なレースでの勝負勘は運だけではない、何か凄い物を持っている。
強さだけではなく、人を惹き付ける不思議な魅力を備えた
数少ない競輪選手の一人だとも私は思っていた。
玉野競輪決勝12Rの予想時間にテレビ解説者が原田や吉田を優勝候補に
挙げていたが、私は全部村上-金子貴絡みの車券を購入すると決めていた。
前日のレースで村上-金子貴ラインが、負けの込んでいた私の期待に
見事に応えてくれたし、負けてもいいから決勝は村上に賭けたい。
前日のレースを見ていた私はなぜかそう思っていた。
テレビ解説者の予想の大半は、村上は実力者だが、勢いのある若手の方が
今後の競輪界を背負って行く人材で、このレースでスターが誕生するかも
しれないというような事を言っていたような気がする。
レース展開予想のボード解説でも、村上はまるで上位に絡まないかのような
解説者達の扱いだった。勢いある若手には勝てないのかな.....
私も少し弱気になってしまい、最終的には村上-金子貴ラインは3連単を
2点購入したのみとなり、他は全て若手メインの車券に切り替えた。
『もう村上の時代じゃない。競輪界を背負って行く若手の時代だ。』
テレビ解説者達は、口にこそ出さなかったが全員がそういった雰囲気を
かもし出していたので、ストリームテレビを見ていた視聴者は
やっぱり村上はもう駄目なのかな。と感じたと思う。
負けてもいいから全部村上-金子貴ラインで購入すると決めていた私は
心の中で村上義弘に謝り、準決勝で凄い捲くりを決めた原田を中心に
吉田、早坂、岩津、神山の組み合わせの予測作業に入り車券を購入した。
決勝12Rが始まると、解説者達の予測した通り原田研太郎と吉田が
主導権争いを展開し、村上は展開に付いて行けなかった。
残り半周で後方3番手に追いやられた村上を見て
ああ、やっぱり駄目だったか。村上はここから捲くるの無理だろ。
レースを見ていた全国の誰もがそう思ったに違いない。
第3コーナーを通過した辺りから、村上がフリーになり
第4コーナーに差し掛かった所で村上の前が急に開けた。
村上は驚異的な追い上げで上位を抜き去って村上-金子貴ラインを
キッチリ1着-3着でねじ込んできた。
レース後、ストリームテレビの解説者は全員が沈黙していた。
村上は結果を出して解説者と視聴者の全員を黙らせてしまった。
表彰式で笑顔一つ見せず曇った表情をしていた村上を見ていて
私は泣きそうになってしまった。
私は間違っていなかった。
解説者の意見に振り回されて、私は自分の意見をねじ曲げてしまった。
村上はそういった雰囲気に飲み込まれなかった。
競輪のレースを見ていて泣きそうになったのは今回が初めてかもしれない。